六年一組、本紛失事件
「無理とは言わせないぞ! やらなければバラす!」

「む、無理です。ひ、人を殴ったことがないので、無理です」

 田脳は哀願するように、高基教諭に腕をつかみ、離そうとしなかった。

「いいからやれ!」

 高基教諭は腕を振り切って、トイレから出て行った。

 音楽室では藤美教諭がピアノを弾いていた。高基教諭が入ってきたのを気がつかなかった。

「先生!」

 高基教諭がゆっくりと寄って行くと、藤美教諭は驚いたように目を丸くした。

「もう、時間ですか?」

 藤美教諭はピアノを弾くのをやめた。
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