六年一組、本紛失事件
33 行き詰まり
 翌日。

 早めに家を出たので、教室には誰もいなかった。六年一組の一番乗りは子吉沢だった。

 本を盗んだ人をさがすのは大変だ。
盗んでない人を犯人扱いするのは人権侵害だからだ。証拠もなく、あやしいだけではいけないのだ。

 子吉沢は黒板、机、ロッカーなど教室にあるあらゆるところを見た。しかし、証拠になるようなことは何ひとつなかった。

 八時半に近づくと、生徒たちがぞくぞく、教室に集まってきた。

 これでは、証拠集めはできないし、犯人を名指しさえできない。

 今日も犯人を推測できないと、子吉沢は思った。
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