六年一組、本紛失事件
「私はそんなことより、藤美先生ともう、会うことも会話もできないと思うと悲しいよ。犯人とかはやめてよ!」

 アリスは涙を流していた。つられるように女子生徒たちはシクシクと涙を流した。もちろんひとみと慶子は別だった。涙よりアリスにどう攻撃しようかうかがっていた。

「須葉留、もう、犯人とか言うより、亡くなった藤美先生の冥福を祈る方が先だ」

 高基教諭が言って、須葉留も場の雰囲気を感じ黙った。ひとみも何か言いたそうであったが口をつぐんだ。

 誰も黙ったことにより、六年一組の教室はこのあとずっと暗かった。今日はあまりにも多くのことがありすぎたのだ。高蔵の敗北、そして藤美教諭の死が生徒たちを暗くしていたのだ。
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