六年一組、本紛失事件
2 学級委員
 六年一組の教室は三階にある。築十年で校舎の壁はクリーム色で真新しさを感じさせた。

 教室内はにぎやかである。まだ、教師がいないからだ。

 クラスの番長、高蔵敏広は見るからに喧嘩が強そうである。五分刈りにした頭髪に福耳で大仏のような顔立ちである。縦にも横にデカイのでそれだけで威圧されるのだ。その横にいつもいるのが子分の笈滝勉である。太っているのは高蔵と同じであるが、眉毛が下がっているので、顔に威圧はない。もちろん喧嘩は弱いので、すぐに泣いてしまう。

 ガラガラと教室のドアが開いた。そこには一人の男が立っていた。そう、このクラスの担任の高基教諭だ。

 生徒たちは一斉に、席に座った。進級して教室も変わって、席が決まっているわけではないが、五年生のときと同じ席順で座ったのだ。


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