season

太陽

「ねえ。」
「何?どうかしたの?」
「これ、硬くてあかないから、あけて。」
「いいよ。貸して。」
固く閉じられた瓶のふたを全身の力を込めて、あけた。
「はい。あいたよ。」
「ありがとう、お兄ちゃん。」
「うん。」

俺は本城太陽。
父親の本城誠は、超有名な元プロ野球選手。
母親の本城郁恵は、超有名な元ピアニスト。
妹の本城美凪(みなぎ)は、中学生。
周りから見れば、うらやましそうに見える、幸せな家庭だ。
でも、決して俺たちは幸せではなかった。
母親は、美凪がまだ小さい頃に、病気で逝ってしまった。
父親は、酒に酔うと、暴力を振るうため、俺と美凪は、実家を離れ、出来るだけ遠くに引っ越すことを、決めていた。

「お兄ちゃん、早く引っ越そうよ。私、怖い。」
「うん。そうだね。でもまだ、父さんに引っ越すこと、言ってないし…。」
「お父さんに何て言うの?」
「大丈夫。俺がちゃんと言うから。美凪は、俺に話を合わせて?」
「わかった。」
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