涙の枯れる頃
「……雪はね。生まれてすぐに、親に捨てられたんだ」
え…?でも、雪の両親はプロの美容師って…
「…今の雪の親は、本当の親じゃ無い。
雪の本当の母の……姉の家族なんだ」
…どういう、事?
じゃ、じゃあ雪は…自分を捨てた人の姉に育てられてるって事?
「雪の姉は、本当の雪の母と違って、雪の心の傷を少しでも癒せる様に、大切に、自分の子供以上に同じ様に育ててくれたんだよ…。でも、それがいけなかった」
……。
なんとなく分かる気がする。
「実の子供が、自分より優しくされ、大切にされてる雪に焼きもちを焼いて、雪に毎晩の様に、悪戯をした。……性的暴行だよ」
……酷い。
雪が、可哀想過ぎる…。
「…それを知った母は、実の子供を散々と叱った。…それが、相当辛かったんだろうね。……その次の日。……実の子供は、マンションから飛び降りて。……自殺したんだ…」
何も…言えない。
私が口を出して、雪に何かを言ったら…雪はどう思う?
…こんな事を知った以上。
雪と、どう接すればいいの?
「…母は毎晩の様に、嘆き苦しんだよ。“私のせいで…私のせいで…”って。……自分を大切にしてくれた母の、その姿を見るのが相当辛かったんだと思う。雪は、自分を責め続けたんだ」
……雪。
とても、悔しい。虚しい。
…けど。
私には、何もしてあげられないよ。
私は…馬鹿だよ。
雪に何も出来ない事が……とても悔しい。
悔しい、悔しい、悔しい。
そして……虚しい、虚しい。