涙の枯れる頃





黙って、手を解いた。

そして、また歩き出そうとすると、抱きあげられた。


「何すんのっ!!? 放してっ!!!」

出来るだけの抵抗をしたが、やっぱり影響ナシ。

車の中に連れ込まれ“もう無理だ”と思い、抵抗を止めた。


「……美姫…?」

ちょっとハスキーがかった声。

それで、健と言う事が分かる。


「…何」

俯きながら苛立ち気に答えた。

すると日向が横から病院名が書かれてる服の袖を見、電話をかけだした。


電話を終えると「…楯間病院に迎え」と運転手に言った。


「…どうしたの?」

「…こいつ、病院から抜け出してきてやがる」

「何で病院?!」

「……知らねぇ」

重い沈黙が流れた。



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