向こう。
あまりにも急な母親の死に、俺は現実を受け入れられず、悲しみに明け暮れていた。
そんなとき父さんは黙って俺の傍にいてくれた。
母さんが死ぬときにも立ち会わなかった父さんを、始めは恨んでいた。
しかし悲しんでいる息子の為に、前よりも早く家に帰って来てくれることに俺は少し嬉しく感じていた。

でもそれは会社から無理矢理取らされた有休を使っていただけだった。
世間の目を気にし、息子を慰めていただけに過ぎなかったのだ。
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