月と境界線
ツキアカリ
遠くに街の灯りが見える、右から左に灯りが流れ近くになる程その速さは増して、車両の中とは別の時間が流れているかのように。
私は今行き先のわからない電車に乗り目的もわからず、次の駅で降りようと決めていた。
両親は私が小さい頃に他界、それから施設で育てられる事になった、とはいっても先生がいるわけでもなく大きな図書館と食堂がわりの大部屋があってみんな好きにやっていた、私は誰とも打ち解けようとしなかった、いつも一人図書館で朝から晩まで過ごした。
それが何年か続いたある日、施設にフランス兵と日本の訓練生がやって来て施設の男の子たちを連れて行くと言い出した。
それは夕焼けが空を赤く染め、男の子たちの影を力無く映した。男の子たちは車に乗せられ、訓練生が最後の一人を乗せようとしている
「待って、私も連れてって」
自分でも何を言っているかわからなかった、ただここから抜け出したかった、別の世界で生きていきたい!
「だめだよ、女は連れていけない」
素っ気なく、まるで相手にしていない、何度言っても答えは同じだとすぐにわかった、何も言葉がでてこなかった。
エンジンの音と黒い煙が宙を舞った、なにもできないまま立ち尽くす私
バタン!
さっきの男が座席から飛び出して真剣な顔で私の前で立ち尽くす。
「君を連れて行く事はできない、ただここにいてはだめだ、できるだけ北へそれもできるだけ早くそして遠くに!」
真剣な眼差しで彼は言った、私は何も言い返せず、車が行ってしまうのをただ見ていた
そして今、訳がわからずただ電車に乗って目的のない旅が始まり、そろそろ退屈していた私は次の駅を目的地と決めていた。それはこれから始まる物語の第一歩だった。
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