あの虹をくぐれたら
すると…



「いてててて!!」



彼女がぎゅっと僕の足を踏み付けた。



周りの客が怪訝そうな顔で僕らを見ている。



「な、なんだよいきなり…」



「今店員さんの胸見てたでしょ。」



彼女はむっとした顔で僕を見ながら言った。



ちょっと待て、誤解だ。



俺はただ店員の名前を…



「言い訳しても無駄だからね。」



有無を言わせないといった感じだ。



彼女は目を僕に合わせてようとしてくれない。



僕は小さく溜め息をついて彼女の横に座る。



「…何よ。」



僕は彼女の頬にそっとキスをした。



顔が段々真っ赤になっていく彼女。



「は、恥ずかしいじゃないの…」



「嘘つけ。始めからこれ目的で頬っぺた膨らませてただろ。」



「ばれてた?」



彼女は舌をペロッとだして恥ずかしそうに笑った。



そんな彼女を僕は好きになったのだ。



「…なぁ。」



「ん?」



彼女は手で団扇のように扇ぎながらこっちを見た。



「付き合って少したったじゃん。」



「うん、そうだね。」



「どうしてあの時オッケーしてくれたんだ?」



「え?」



彼女はキョトンとしている。



それと同時にアイスココアが伝票と共にテーブルに置かれた。



彼女はアイスココアを一つ、自分の手元に引き寄せるとストローで氷を掻き混ぜてから一口分飲み込んだ。



「んそんなのどうでもいいじゃん。」



「え?」



「好きなんだからそれだけでいいじゃん。好きな事に理由はいらないよ。そうでしょ?」



彼女はそういってにこっと微笑むと、再びココアを口にした。



まぁ…いいか



僕も冷たいココアを口にした。
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