紡歌<ツムギウタ>
「ソウマ、ソラ!」
ツキが嬉しそうに羽根をパタつかせ、ソウマの肩に飛び乗った。
ツキが飛びついた方と反対側の肩には、一匹の黒猫が乗っている。ソウマについている死神の使い、ソラだ。
ソラはツキと全く同じ容姿で、黒い羽根と三つの尻尾を持っている。
違うところと言えば、右耳に赤い宝石のピアスをしているところ、ツキよりも大人びた冷静な目をしているところぐらいだ。
「ツキは、いつ見ても変わんないわね」
はしゃぐツキを横目で見ながら、ソラが気だるそうに呟いた。
そんな二匹をよそに、キズナがゆっくりとソウマに近付き、消え入るような声で尋ねた。
「あんた、もう記憶が戻ってるって本当?」
予想外の質問に、ソウマが見開いた目でキズナを見下ろす。
しばらくの沈黙の後、空中でじゃれ合っているツキとソラに向かって、ソウマが声を掛けた。
「なぁ、久々なんだし、二匹で散歩でもしてこいよ。仕事ばっかじゃ疲れるだろ?」
二匹の顔がぱぁっと明るくなった。ツキが嬉しそうに三つの尻尾を振り、声を張り上げる。
「うん、行こう!ソラ!」
飛んでいく二匹を、手を振りながら見送っていたソウマは、二匹が完全に見えなった後、キズナに向き直った。
「……お前、記憶が戻ったな?」
ソウマが探るように問いかけたが、キズナは俯いたまま口を開こうとしない。そんなキズナを見兼ねて、ソウマが再び話し出す。
「その事を知っているのは、俺と神だけだ。神に会ったんだろ?」
「……なんで天に逝かなかったの?」
キズナはソウマの問いかけに答えず、問いを投げ返した。
ソウマは少しの間黙っていたが、やがて壁にもたれて座り込み、キズナにも隣に座るように促してから話し始めた。
「俺の記憶が戻ったのは、死んでから十五年ほど経った頃だったな。ソラの中に神が現れて、俺に選択を促した。俺は罪を償うため、死神として残る事を選んだ」
「罪?」
ソウマの横に座り込んだキズナは、やっと顔を上げた。そこには、いつもの明るさからは想像出来ないほど悲しい顔をしたソウマがいた。
「そう。忘れてはいけない……最大の罪」