知らなかった僕の顔
成り行きじょう、僕と矢島さんは夜の道を一緒に歩いた。


同じアパートに帰るのだから仕方がない。


「今夜も熱帯夜だね」
矢島さんが、プロ野球チップスを食べ歩きながら言った。

「早く秋になってほしいですよ」

「宮田くんは、夏嫌いなの?」

「好きではないかな。汗かきなんで」

「でもさ、汗って素晴らしいじゃないの。特に野球選手の汗なんか、もう最高だね」

「…大好物ですか?」

「大好物、大好物」


矢島さんが、何をどこまで本気で言っているのか僕にはわからない。


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