奈良の都の妖しい話
「…もしかして、泣いていたの?」

「あ……。」

「やはり、宮様が出家なさるから…?」

「はい…。実は…私………宮様の御子を…」

「えっ!?…宮様はそれを…」

「…知りません…この子がこの先、父親の顔を知らずに育つと思うと……」

「紗々殿……早く宮様が御寺に行ってしまう前に伝えないと…。」

「……。」

「紗々殿…。」

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