奈良の都の妖しい話

放たれる蝶

それから美羽子は父宮の屋敷で暮らし始めた。

(久しぶりね…此処に帰ってきたのは…)

「美羽子。」

「父上…お久しゅうございます。」

「……辛い目に遭わせたな…済まない…。」

「……いえ…。」

(確かに短い結婚生活ではあったけど…私は……東宮様に出会えて………良かったと思う。)

「…正直、また誰かに嫁いで、儂が亡きあとのことを心配しなくても良いようにしたいのだが…」

「亡きあとだなんて…そんなずっと先のことでは…。」

「そうとは言えぬ。だが……自由にしてくれてかまわない…。」

「……。」

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