夢を正夢にする夢
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「見たわよ。岬っちゃん。とうとう、やったじゃないの。おめでとう」

校門をくぐるやいなや、響加とばったり合って、そう祝福の言葉をもらった。

彼女は・・・

本気で、褒めている・・・。

「で、鷹を出して、ムカデに勝利ね☆ えーと・・・ムカデは・・・男だったっけ?」

そうそう。

男って意味。

私は、その男に、砂を殴りつけていたのよ。

形にならないもので、殴りつけていたのよ。

子供、小さい頃の私自身を助けるために・・・

「おとぎ話みたいな夢を見たわね・・・岬っちゃんたら・・」

ふと顔を上げると、心配そうな響加の瞳があった。

本当に・・・

この子って、エスパーかしら・・・

「でも、良かったわね・・・楠木君も夢に出てきたんでしょ?」

「・・・・・・うん」

「元気ないわね・・・」

響加の言葉に、私はため息をついた。

どうしたの? って語りかけてくる、大きな瞳を見つめる。




「夢の中の楠木、格好良いんだもん・・・」




ボソリ・・・・

歩きながら話す。

あれ?

隣にいたはずの響加が居ない。

後ろを振り返ると、響加の、時が止まっていた。




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