魔女の報酬3~封呪の守り人~
「大概にしろ、僕だって、そうそう、抱きつかせてはもらえないんだ」

 シャリアは振り返って兄を見上げると、なにを思ったのか、つまさきだって彼の耳元に何事かささやいた。

 と、みるみるロランツの頬に朱が散る。

「シャ、シャリア!」

 ロランツが腕を振り上げると、さっと彼女は兄から離れ、メディアの後ろに隠れる。

「何よ、あんた、何言ったの?」

 ロランツが顔を赤くするところなんて、はじめて見たメディアは思わずシャリアに尋ねる。いったい、何を言ったら彼をこんなふうに狼狽えさせることができるのか、非常に興味があった。

「聞きたい?」

「聞きたいわよ」

 とたん、ロランツの声が飛んでくる。

「言うな、シャリア」

「もう怖いなあ」 

 そう言いながら、シャリアはメディアの背後から肩に腕を回すと、ロランツはますます怒った顔で、妹をにらみつける。

 兄妹ケンカのまっただ中に巻き込まれた形のメディアは、どうしていいかわからずにうろたえていると、いきなりバタンと扉が開いた。
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