魔女の報酬3~封呪の守り人~
「別にいらないわよ」

「君は、婚約者に贈り物をする楽しみまで奪うのかい?」

「そんなことまで、私、知らないわよ」

「つれないなあ」

 ぷいと横を向いてしまったメディアの頭の上に、ロランツは手を乗せるとその髪を撫ではじめる。長い指が赤い髪にからみ、もてあそぶ。

 ロランツのその仕草は、何だかこのごろ癖になってしまったのじゃないかと、メディアは思う。

もともともつれやすい髪が、さらにぐしゃぐしゃになるので、メディアにとってはあまりありがたくはない癖のはずだが、そうされるのは嫌いでもなかった。

「さっき、妹が君に触れるのを見ていて、いらいらした。君に他人が触れるなんて、もっての他だ。君がおしゃれをするのに、人の手が必要だというのなら、僕がやりたいくらいだ」

 無茶苦茶なこと言い出したロランツは、メディアの頭の上に、自分がもたらした惨状にようやく気づく。

「髪、ぐしゃぐしゃだな」

「誰のせいよ」

 真っ赤になって睨みあげてくるメディアの抗議を、彼は笑顔とキスで封じた。
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