雪花-YUKIBANA-
スケッチブックを抱きしめて、桜子は顔を真っ赤に染める。


その姿を見ていたら、とたんに嬉しさがこみ上げた。

彼女のそっけなさの理由が、僕と同じだとわかったから。


そっと肩に手を置くと、桜子は身を硬くした。

僕は彼女の顔を覗きこむ。


「いつ描いたの?俺の、寝顔なんか」

「……よ、夜中」


ふたつの唇の距離が、近づいていく。


「寝てなかったんだ?」

「目…覚めて。なんとなく、横に寝顔があったから……」

「すごい嬉しい」


そして

僕らの唇を遮るものは、何もなくなった。


昨夜感じた甘い痛みが、また胸に広がるのが分かった。


彼女が愛しくて愛しくて、

もっと触れたくて。


「なあ、桜子。……俺、約束やぶっでもいい?」

「え?」

「下心は持ちませんなんて、もう無理だ……。
もちろん、桜子がいいって言うまでエッチはしないけど。
でもやっぱり俺は、もう君を妹だとは思えないから」


桜子が目を丸くして、口をパクパクさせた。


「どういう意味?」と言っているようだったけど、音になっていなかった。


彼女をまっすぐ見つめて、僕は言った。
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