雪花-YUKIBANA-
「ほんと、どこ行ったんだろ……」
ため息をこらえて僕は上を向く。
秋晴れの空はどこまでも高く、いわし雲が広がっている。
桜子のことでひとつだけ、僕を安心させた情報があった。
月末の借金の返済日に、彼女名義でお金が振り込まれていることが分かったのだ。
もしや事故にでもあっていないかと心配していたけれど、これによって僕の不安は少し軽減した。
けれど、家を出た桜子にとって、返済が楽でないことは確かだ。
仕事は?住む場所は?
彼女のかさついた手の甲を思い出し、僕の胸は絞めつけられる。
「……あれ?」
ふと気づいた。
そういえばこの辺りは、桜子が以前働いていた中華料理屋の近所のはず。
僕は行ったことがないけれど、桜子から話のネタとしてさんざん聞かされてきたから、だいたいの場所は知っていた。
「ああ~。なんか腹減りません?」
手のひらでお腹をさすりながらコバが言った。
「店長、メシ食いに行きましょうよ」
「……中華」
「え?」
「中華がいいな」
「おお!いいっすね!」
コバの無邪気な声が秋空の下で響いた。