雪花-YUKIBANA-
店に入ると、先に出勤していたコバが、僕の顔を興味深そうに見つめた。


「何?」

「いえ、別にぃ」

「あっそう」


ポケットからネクタイを取り出し、それを自分の首元に巻きつける。


ふと視線を感じて顔を上げると、やはりコバのニヤけた瞳がそこにあった。


「だから、何?」

「楽しそうっすね」

「は?」


ネクタイを結ぶ様子の、どこが楽しそうに見えるのだろう。


僕が何も答えずにいると、コバは自ら言葉を続けた。


「なんか最近の成瀬さん、イキイキしてます」

「そうでもないと思うけど」

「いやいや。住む所が決って店に寝泊りしなくなった頃から、急に表情が明るくなりましたもん」

「そりゃまあ、多少なりとも生活が安定したんだからね」


それだけじゃないと思いますけど?

と意味深な口調でコバが言った。
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