雪花-YUKIBANA-

最後の客を見送って店を閉めたとき、
時計はすでに0時をまわっていた。


それでも街は、時間を忘れたようにやかましく、

騒がなくては損と言わんばかりに、人々が刺激を貪っていた。


そのせいだと思う。

「飲みにいきませんか?」

とコバに誘われたとき、
ふたつ返事でうなずいてしまったのは。







「もうすぐ来ますから」


大通りに面した居酒屋で、コバはそう言った。


僕らが座ったのは4人がけの席で、
コバの視線は、空席のままのふたつの椅子に向けられていた。


「何?誰か来んの?」

「ちょっと成瀬さんに紹介したい奴がいるんです」


オーダーをとりに来た店員に「生中2つね」と頼むと、
コバはゆったりとした動作で背もたれに体をあずけ、
僕の顔を見た。


「俺の知り合いに、マユミって女がいましてね。
そいつがうちの店で働きたいみたいなんですよ」

「まじで?」


僕は思わず身を乗りだした。


店の不景気の最大の原因は、コンパニオン不足だ。

新しい人員は喉から手が出るほど欲しい。
< 49 / 348 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop