雪花-YUKIBANA-
最後の客を見送って店を閉めたとき、
時計はすでに0時をまわっていた。
それでも街は、時間を忘れたようにやかましく、
騒がなくては損と言わんばかりに、人々が刺激を貪っていた。
そのせいだと思う。
「飲みにいきませんか?」
とコバに誘われたとき、
ふたつ返事でうなずいてしまったのは。
「もうすぐ来ますから」
大通りに面した居酒屋で、コバはそう言った。
僕らが座ったのは4人がけの席で、
コバの視線は、空席のままのふたつの椅子に向けられていた。
「何?誰か来んの?」
「ちょっと成瀬さんに紹介したい奴がいるんです」
オーダーをとりに来た店員に「生中2つね」と頼むと、
コバはゆったりとした動作で背もたれに体をあずけ、
僕の顔を見た。
「俺の知り合いに、マユミって女がいましてね。
そいつがうちの店で働きたいみたいなんですよ」
「まじで?」
僕は思わず身を乗りだした。
店の不景気の最大の原因は、コンパニオン不足だ。
新しい人員は喉から手が出るほど欲しい。