雪花-YUKIBANA-
「こんな時間まで起きてたのって初めてかも」


パーティーの後、食器を洗いながら桜子が言った。


その言葉につられるように、僕はキッチンの壁にかけられたハト時計に目をやる。


8時……すっかり朝だ。


熱っぽい口調で桜子が続けた。


「私って、大晦日ですら夜ふかししないタイプなんだ。
だからなんか今、不思議な気分なの。
昨日と今日の日付変更線が、どこかに飛んで行っちゃったみたい」


「平日なら桜子は、今ごろ学校に向かってる時間帯だもんな」


「ね!そうだよね!なんかすごい」


桜子は胸に両手を当てて、ほうっと息を吐く。


静かな朝が僕らを包んでいた。


日曜の町は誰もが寝坊助で、

開け放った窓から聞こえてくる音は、鳥の鳴き声だけだった。


「さて、そろそろ寝ようか」

タオルで手をふきながら僕は言った。


「え?寝るの?」

桜子が声を上げる。
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