アースルーリンドの騎士 番外編ファントレイユとの出会い
ソルジェニーはこれを聞いて、

心が震えた。

彼のその言葉が、自分の立場より本当に

ソルジェニーの気持ちを優先し、

気遣ってくれると、感じたからだった。

儀礼的に、もしくは責務上

彼を気遣う者達は大勢いたけれど、

心から気遣ってくれる相手が、今まで

この城の中に居なかった事をソルジェニーは、

その時になって初めて、気づいた。

ああ・・・だから・・・。

唯一、一番身近ないとこのギデオンと

会った時、あれ程嬉しく、

彼が去った後とても寂しく感じたのは、

そのせいだったのかも知れない。

ギデオンは、身内だから特別なのだと、

思っていた。

けれどそうじゃなくて、

彼を気遣ってくれる相手がこの城で、

ギデオンただ一人だけだったという事だ・・・。

今までは。

それでソルジェニーはそのまま、自分の心を彼に、

告げた。

「・・・私は貴方が護衛で、とても嬉しいです。

貴方もそう思って頂けると嬉しいんですけれど」

ファントレイユはとても優しげな表情で

柔らかく微笑んで

「・・・そりゃあ・・・。近衛と来たら

それは殺伐としていますから、宮中で、

こんなに優雅で楽しい職務を努めていられるのが、

嬉しくない筈ありませんよ。

貴方のご性格は本当に、

申し分無くお優しい方ですし」

そう誉められてソルジェニーは思わず、

頬を染めて頷いた。

彼に気に入られた事が、こんなに心が弾んで

楽しい事だなんて、思わなかったし、

誰かに気に居られてこんなに嬉しい事は、

今までに無かったからだった。
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