月と太陽の事件簿15/人形はなぜ捨てられる
息子夫婦が容疑から外れるということは、その時間帯にアリバイが存在することになる。

「息子の哲夫はその時間、父親の捜索隊に加わっていました」

「証人は?」

「地元の消防団員たちです。捜索が行われたのは7日の午後8時から翌8日の午前0時まででした」

その間、哲夫が単独行動をとらなかったことは、多くの者が証言しているという。

「妻の光子は?」

「捜索隊には加わりませんでしたが、こちらもアリバイはハッキリしています」

光子は『とてもじゃないが家で待ってる気にはなれない』と言って、消防団の詰所にいたそうだ。

「留守番の消防団員や所轄の警官、地元婦人会の面々が一緒にいました」

それらの人々いわく、光子は心ここにあらずといった様子であったが、励まし等にはちゃんと応じていたそうだ。

そして捜索が打ち切られた8日午前0時過ぎ。

鳥海夫妻は、所轄の警官が運転するパトカーにて帰宅した。

つまりアリバイは成立ということになる。

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