月と太陽の事件簿15/人形はなぜ捨てられる
あたしが訊いても同じだろう。

仮説が確信に変わるまで推理は口にしないというのが達郎のポリシーなのだ。

「今回の事件の他に、何か目立った事件は起きましたか?」

達郎は情報を求めた。

今回の事件に関して、まだ推理の糸口が掴めていないようだ。

「目立った事件ですか」

北島警視は別のファイルを手に取った。

「もともとあの辺りは刑事事件が頻発するような所ではないんですが…」

警視はファイルをめくる手をとめた。

「昨日のことなんですがK町の写真館が襲われました」

「襲われた?」

物騒な響きに、あたしは思わず聞き返す。

「襲われたと言っても、店頭のガラスが割られて飾ってあった写真が破られたという、その程度の被害ですが」

恐らく酔っ払いの仕業でしょう、と北島警視はファイルを閉じた。

「写真館ですか」

達郎はあたしにだけ聞こえる声で、こうつぶやいた。

「それ事件につながったら凄いな」

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