月と太陽の事件簿15/人形はなぜ捨てられる
「店をたたもうかと思いまして」
哲夫は消え入りそうな声で言った。
「この町は見ての通り田舎に毛の生えたような町ですから、噂が広まりやすいんですよ」
面と向かって何かを言われたわけではない。
しかし、物見高い視線は感じる。
集まっている人たちを見ると、自分たちのことを話しているのではと疑念が生じる。
人が皆、好奇心の塊となってこちらにやって来る気がする。
そうなってしまうともう、客商売はできない。
「店をたたむだけではなく、この土地を離れようかとも思っています」
哲夫は移住先として、L県の名前を挙げた。
「L県というと、山陰地方ですね」
それまでじっと黙って話を聞いていた達郎が、口を開いた。
「奥様は山陰地方の出身と伺いましたが」
「はい。L県は妻の出身地です」
光子の親戚を頼り、そこへ腰を落ち着けるつもりだという。
「ここよりもはるかに田舎らしいです。山の中の村だそうですよ」
哲夫は消え入りそうな声で言った。
「この町は見ての通り田舎に毛の生えたような町ですから、噂が広まりやすいんですよ」
面と向かって何かを言われたわけではない。
しかし、物見高い視線は感じる。
集まっている人たちを見ると、自分たちのことを話しているのではと疑念が生じる。
人が皆、好奇心の塊となってこちらにやって来る気がする。
そうなってしまうともう、客商売はできない。
「店をたたむだけではなく、この土地を離れようかとも思っています」
哲夫は移住先として、L県の名前を挙げた。
「L県というと、山陰地方ですね」
それまでじっと黙って話を聞いていた達郎が、口を開いた。
「奥様は山陰地方の出身と伺いましたが」
「はい。L県は妻の出身地です」
光子の親戚を頼り、そこへ腰を落ち着けるつもりだという。
「ここよりもはるかに田舎らしいです。山の中の村だそうですよ」