月と太陽の事件簿15/人形はなぜ捨てられる
達郎はほう、と意外そうな顔をした後、とんでもないことを言った。
「奥様は山の事故で御両親を亡くされたそうですが、山に住むことに抵抗はないんですか」
ぶしつけにナニ訊いとんじゃ、コイツは!
あたしは心の中で冷や汗をかいたが、達郎の顔は真剣そのもの。
哲夫も達郎の発言の意図がわからなかったようで、戸惑っていた。
「ま、まぁ抵抗はあったようですが…」
そう言って傍らの妻に目をやる。
「もう、30年も前の話ですから」
光子は夫より幾分かは落ち着いていた。
「これを機に、両親が眠る土地に戻るのもいいかなと思ったんです」
「そうでしたか。でも、お隣の仁藤さんはさびしがるでしょうね」
「仁藤さんには本当にお世話になりました」
「事件の前日も仁藤さんのお宅に伺っていたそうですが?」
「はい」
「仁藤さんは光子さんの笑い声が印象的だったと言ってました。ところで…」
ここで達郎は哲夫に視線を戻した。
「奥様は山の事故で御両親を亡くされたそうですが、山に住むことに抵抗はないんですか」
ぶしつけにナニ訊いとんじゃ、コイツは!
あたしは心の中で冷や汗をかいたが、達郎の顔は真剣そのもの。
哲夫も達郎の発言の意図がわからなかったようで、戸惑っていた。
「ま、まぁ抵抗はあったようですが…」
そう言って傍らの妻に目をやる。
「もう、30年も前の話ですから」
光子は夫より幾分かは落ち着いていた。
「これを機に、両親が眠る土地に戻るのもいいかなと思ったんです」
「そうでしたか。でも、お隣の仁藤さんはさびしがるでしょうね」
「仁藤さんには本当にお世話になりました」
「事件の前日も仁藤さんのお宅に伺っていたそうですが?」
「はい」
「仁藤さんは光子さんの笑い声が印象的だったと言ってました。ところで…」
ここで達郎は哲夫に視線を戻した。