サクラ咲ク


「急に現れて、散々巻き込んで。笑って、怒って、泣いて。それで今度は、また笑って“さよなら”って・・・そんな我が儘が、許されると思う訳?」




その表情は、抱きしめられてるからわからない。



だけど・・・






「麗くん・・・・?どうして・・・?」






どうして、貴方が、







「泣いてるの・・・?」










耳元で聞こえた震えた声。


涙の伝う音すら、聞こえてきそうな距離。





戸惑いながら、私もその背中に手をまわす。






「・・・俺と共に来なよ。」







夏の残り風が吹いて、戻らない季節の名残を教えた。




そっと、雲間から月がさす。






「お願いだから、遠くになんて行かないで・・・・」





彼はそう言って、私の肩に顔を埋めた。





月の光が、優しくて。




麗くんの髪の上を、光の粒子がはしゃいで転がる。








「うん・・・・・」










気がついたら、私はそう呟いていた。











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