サクラ咲ク


殺して、とねだって、私はゆっくり微笑み、顔をあげた。



顔をあげると、ポツリと雨が降ってきた。




おかしいな…
こんなに晴れた青い空なのに。


お天気雨かしら?






「…ねぇ、近藤さん?」


「………ッ……」


「どおして、あなたがないてるの?」




しょっぱい雨が、ぽたぽたと私の頬に伝う。


近藤さんの涙が、私の頬に。






「……すまない…。私は悠希くんの願いを聞いてやれんよ…」




泣きながら、彼は言った。






「だがな、帰る場所がないなら、」




泣きながら、でも、優しく笑って彼は言った。





「私と一緒に来ないかい?」







空が泣いた日。
太陽が泣いた日。


拒絶された世界で、
貴方は私に、
手を差し延べた。


おおきくて あたたかい
その手を―――…………







.
< 23 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop