50代のビキニ
厚子さんのこと
小学校5年生の頃だったと思う。

給食が終わったら掃除の時間。

5人一組の班に分かれて掃除する。


その日、私達は校庭の片隅を掃除した。

竹箒を持って掃いたり、草取りをしたり、石ころをのけたり。

大概は、みんなめんどくさそう。

私も。

ふざけて箒で遊んでいる男子もいる。

厚子さんは、一人黙々と箒で掃いている。

丁寧にごみを集めている。

ちり取りですくう。

すくえない小さなちいさなごみがあった。

どうしても取れない。

厚子さんは
それを
手で拾って
ちり取りにおさめた。


びっくりした。

そんな小さなごみなんか、そのままでいいじゃないか。
なのに、彼女は汚れたごみを手で一つ一つ拾った。
最後のさいごまで。


私は、この人は特別な人だと思った。

大袈裟かも知れないが神様みたい。


彼女の話し方は静か。
そしていつも美智子皇后様みたいに慈愛に満ちて、穏やかな顔。


誰もが彼女と一緒にいたいと願う。

彼女の周りは自然に輪が出来た。



同じ小学生なのに!
この人は特別な人。
崇高な人だと思った。


数年前に同窓会の写真が送られてきた。

昔通り、穏やかな表情だった。

人間って、生まれ持った何かがあるのか



あの掃除の時間がふとした時に蘇る。


ちゃんと生きなさいと私を諭す。

決して誰かに褒めてもらう為でもない。
きれいにしたいから掃除をする。


厚子さんの姿は、今も私に眩しい。
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