生きる理由は何ですか?
工場長が向かった先は会議室。
ドアを開け中へと促されて入るとそこには見たことはあるが名前も知らない人が二人。
疑問を感じながらも中へと入り隣へと腰を下ろす。
隣に座る男性はまだ三十歳になったばかりだろうか。
男性の隣に座る男性も僕より少し上というくらいで、嫌な予感は的中していそうだと僕はこっそりと溜息を吐いた。

「三人に大事な話がある。心して聞いて欲しい」

工場長のあまりにも真剣過ぎる顔付き、話し方に僕以外の二人も話が何か大体の予想がついたようでうなだれてしまった。
僕だけが顔を見ていたためか申し訳なさそうな、苦しそうな工場長のほんの一瞬見せた表情を見逃さなかった。
一瞬の沈黙が室内を包む。

「非常に申し訳ないが、三人には他を探して欲しい。勤務がとかではなくこの間の会議で人員削減が決まってしまったんだ」

ああ、やっぱり。
言われなくても分かっていたがこうもストレートに言われると結構なダメージが与えられるものだ。
リストラだなんて今は当たり前で、自分にその火の粉が掛からないとは限らない。
分かっていた。そう、分かっていたが、悔しい。
確かに僕の勤務体制はあまり良くはなかった。
しかし悔しいものは悔しい。
僕は立ち上がり工場長に一礼だけしてその場を後にした。
何か言っていたががどうでも良かった。

僕は荷物をひっ掴み作業着のまま会社を飛び出す。
行き場などないがそれでもクビと言われた以上会社には居られない。
家に帰る気にもなれない。
かと言ってふらふらするにも格好が悪い。せめて着替える位すれば良かったと苦笑しながら道を歩く。
時折通り抜ける車を見ると飛び込んだら楽だろうかという気持ちが頭をよぎるが迷惑が幾重にも掛かるだけだろう。
そう思うということはまだ死にたいという願望は強くなさそうだ。
否、やはり臆病なだけか。
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