ある日モテ期がやってきた!!~愛されすぎてどうしよう~
帰り道を、犬飼くんと並んで歩く。
……啓介くんと付き合いだしたばかりだったのに、もうその関係が終わってしまった。
これから私、啓介くんとどんな顔で話せばいいんだろう?
……ううん、顔を合わせること自体、なくなってしまうかも……。
なんで私、オーケーなんてしたんだろう。
イヤならイヤって言えばいいのに、なんで私は、犬飼くんにオーケーを出してしまったんだろう?
“啓介は承諾してくれた。”
……やっぱり、あの言葉があったからかな……。
啓介くんが私のことを想ってくれていないような、そんな気がしちゃった。
だから私は、オーケーを出した……。
「奈央ちゃん、大丈夫?」
「……え? あっ……うん、大丈夫」
無言で歩いていた私を、犬飼くんが心配そうに見ていた。
「ごめんね、ちょっと、色々……整理出来なくて……」
「うん」
私の言葉に、犬飼くんは優しい顔で笑ってる。
私は今日から、この人を想いながら生活していくんだ……。
「えと……送ってもらってありがとう。
もう近くだから平気。 ほんと、ありがとう」
「そう? じゃあ、着いたらメールして?」
「うん」
手を振って離れていく犬飼くんに、私も同じように手を振って歩き出す。
……もう考えるのはやめよう。
ちゃんと切り替えていこう。
オーケーを出したのは私。 だからこれから私は、犬飼くんを見て過ごしていく。
啓介くんとの関係がどうなっていくかはわからないけれど……だけど今は、前を見て歩くしかない。
振り返らずに、前だけを見る。
そう決めて、ただ前だけを見つめながら歩き続けた。