ある日モテ期がやってきた!!~愛されすぎてどうしよう~


胸の奥から、言い様のない想いが込み上げてくる。


“啓介は承諾してくれた。”


……啓介くんは、私が犬飼くんと過ごしていてもいいんだ……。




「……啓介くんがいいって言うのなら、私も、いいよ……」


……なんでこんなこと、言ってるんだろう。

本当は違う。 私は啓介くんと一緒に居たい。 そう思っているのに……。


“啓介は承諾してくれた。”


その言葉を聞いたら、もう私の想いなんて言えない。

啓介くんが決めたことに、私も従うしかない……。


「……そっか。 じゃあ、俺の隣に居てね」

「……うん」

「学校では今まで通りにするよ。
俺と奈央ちゃんが話してるのって、女の子たちはイヤみたいだから」

「ん……」


学校では今まで通りただのクラスメート。
だけどみんなの知らない部分で、私たちは繋がっている……。


ズキン ズキン ズキン....


さっきよりももっともっと胸が痛くなる。

なのに私は、犬飼くんを見て小さく微笑んだ。


「……そろそろ、帰ろっか」

「……わかった、送るよ」

「ありがとう」


優しい笑顔と、静かに差し出された手。

私はこれから、この人の隣に居る……。




「おいで」


……みんなが憧れる、優しい優しい王子様。
そんな人と一緒に居る未来は、きっと凄く幸せなものだと思う。

……これでいい。

啓介くんが承諾して、そして私も犬飼くんを選んだのだから。

だから、これでいい。




……そう思っているのに、心臓はもっともっと痛くなって、決して治まることはなかった。


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