~LOVE GAME~


「寝ていたお前が悪い」
「そんなぁ~……っていうか、委員長を今頃決めていたんですか!? 新学期始まって結構たちますよね!?」

すでに新学期が始まりひと月だ。
普通はもっと初めに決めるものだよね? それを今頃決めていたなんて……。
文句も言いたくなるよ。
すると、先生は悪びれもせずに微笑んだ。

「うん、すっかり先生忘れてたんだ」

なっ……!
そんな笑顔で返されても……。
そこまでハッキリ言われると、なにも言い返せない。
クラスの中も、もう有無を言わさない雰囲気になっていた。
むしろ、お願いと拝む子さえいる。
嘘でしょう……。
絶望的な気分になり、頭がくらくらしてくるほどだ。

「頑張れ、楓」
「頼んだぞ」
「松永にピッタリだ」

など、クラスメートもここぞとばかりに笑顔で拍手してくる。
みんなやりたくなかった役が他の人に決まったことで安堵の表情をしていた。
ずるい、と叫びたかったが寝ていた自分も悪い。
文句を言えた義理ではなかった。
自業自得という言葉がまさに当てはまる。

「ちなみにさっそく今日の放課後、委員会あるから。よろしく~」

ここまで来ると断れない。
仕方ない、とうな垂れた。

「わかりましたよ」

私はしぶしぶと引き受け、椅子に座り直した。
うわぁん、面倒くさい!
学級委員なんてやることたくさんあるよね!?
私の平穏なのんびり高校生活が~……。
寝ていた自分を思わず呪った。

「じゃぁ、男子は? 誰か委員長やってくれるやついるか?」

先生がもう一人の委員長を決めようとすると、「はい」と声が上がった。

「先生、俺やります」

一人の男子が手をスッと挙げた。

「おぉ、貴島。お前がやってくれると安心だ。頼むな」
「はい。よろしくね、松永さん」
「あ、よろしく……」

爽やかな笑顔で振り返った彼は、確か、貴島 聡 (きじま さとし)くん。
入学試験の成績が良く、学年2位だったと聞いたことがあった。
塩顔男子って言う感じで笑顔が爽やかで背も高く、確か女子からの評判は結構良い方だったはず。
そんな彼と同じ学級委員をやれるなんてある意味レアだろう。

「良いなぁ、貴島くんと一緒で。貴島くんがやるなら私もやれば良かった」

ちなが羨ましそうな声で言うから、思わず私は身を乗り出した。

「代わるよ!? ちな!」
「……やっぱ遠慮しとく」

笑顔で首を振られ、がっくり肩を落とす。
ですよね……。
面倒くさいものを引き受けてしまった。
はぁ。私の思い描いていた高校生活が………。
私は大きくため息をついて、頭を抱えたのだった。





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