~LOVE GAME~


放課後になり、荷物の整理をしていると、私の机まで貴島君がやってきた。
見上げると爽やかな笑顔で微笑む。
いやぁ、いい笑顔だこと。みんなが騒ぐのもうなずける。
貴島君は自分の荷物を持ちながら、廊下を指差した。

「行こうか、委員会」
「あ、うん」

私は慌てて荷物を鞄にしまい、ちなに別れを告げて貴島君と教室を出た。
委員会が行われる集会室へ肩を並べて歩き出す。

「それにしても、面倒な役になっちゃって大変だね。大丈夫?」
「うん、仕方ないよ。寝てた私が悪いんだもん」

気遣ってくれる貴島君に肩をすくめて答える。
本当、仕方ない。
こればかりは自業自得であり、もうやるしかないもんね。
いつまでもごねていても仕方ない。割り切るしかなかった。
でも、正直学級委員なんてやったことないからどうしていいかわからないのが本音だけれど……。
貴島君はそんなことお見通しなのか、優しく微笑んだ。

「俺、中学時代になんどか学級委員やったことあるから出来る限りサポートするし、心配ないよ。一緒に頑張ろう」
「そうだね、頑張ろう。よろしくね」

その笑顔に、つられて私もへらっと笑顔を返す。
うわぁ~、爽やかだわ。そして優しい!
いい人と委員長になれたみたい。
なにより、頼りになりそうだし……。安心した。
ありがとう!
貴島君の足を引っ張らないよう、私精いっぱい頑張るからね。
ひとり感激していると、貴島君が小さく笑った。
顔を上げると、苦笑している。

「でも、先生もウケるよな。委員会の日に慌てて選ぶなんて」
「本当だよね。忘れてたなんてね」
「まぁ、俺らも忘れてたけどね」

アハハと笑い合う。
委員会が始まるまで、一気にリラックスできた。
貴島君とこうしてちゃんと話すのは初めてだけどいい人みたい。
良かった。
私はホッと胸をなでおろした。

委員会が行われる集会室に到着すると、すでに殆どのクラスが集まっていた。
というか、入口付近に集まっている!?
なぜか集会室の入口に人だかりができていたのだ。
なんでみんな部屋の中に行かないの?
んん? 女子がなんだか色めきだっている?
何事かと首をひねるが、きゃぴきゃぴした女の子たちが興奮気味になっており、状況がよくわからない。
みんなが見ている方を見ようとするが、これまた中がよく見えない。
ん~。困った。
中に入れないんですけど……。
入れず女の子たちの後ろで困っていると、貴島君が私に声をかけた。

「松永さん、どうしたの?」
「あぁ、貴島く……「きゃぁ、貴島君よっ」

返事をしようとした私の言葉にかぶせるように、前にいた女の子たちが甲高い声を出した。
女の子たちは今度は振り返って貴島君を恥ずかしそうに見つめている。
なんだなんだ?
すると中から、「やばい! カッコイイ! 爽やか」「委員やってよかった」「超ついている」などなど、女の子たちの会話が聞こえてくる。
へぇ、貴島君て本当に人気なんだ、と感心する。
本人は聞こえているのかいないのか素知らぬ顔だ。

「今年はついてるね。貴島君にあの春岡君もいるんだもんっ!」
「委員長になって良かったー」
「ドキドキするねっ」

なんて声も聞こえてくる。



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