~LOVE GAME~


さんざん街中を歩き回ったが、手ぶらだった。

「結局、何も買わなかったじゃない」
「俺はね。お前は色々買ってたみたいだけど?」
「うっ……」

私は手元の袋を見る。
だって最近買い物してなかったからさ、つい。
でも龍輝君はなんだかんだ言いながら、行きたい所に付き合ってくれた。
意外と優しい……かも?

「お前、門限とかは?」
「ないよ」

先日帰ってきたお母さんは、またお父さんのところに遊びに行ってる。
それなら、と龍輝君は近くのカフェに入っていった。
初めてくるカフェだ。内装が可愛らしいから、高校生もチラホラ見かける。
大好きなイチゴのカフェオレもあるし、このお店は今後もリピートしなきゃ。
私はイチゴカフェオレ、龍輝君はコーヒーを飲む。
そして、周りを見てフッと気が付く。
高校生カップル多いなぁ……。
私たちもそんな風に見られているのかな?
そう考えると、なんだか、これって放課後デートみたい……。
そんなことを思ってハッとする。
なにドキドキしてるの。
これはデートじゃなくて、無理やり誘われたんだから。
まぁ、結果楽しかったけど……。
それにしても……。

「どこ行っても注目されるね」

カフェにいた数人の女性陣はチラチラと龍輝君を見ていた。
確かに、龍輝君は目立つもんな。

「ん?何か言ったか?」

本人は注目されることに慣れているのか、単に気が付いていないだけなのか、私の小さな呟きに龍輝君は首を傾げた。

「何でもないよ」
「? まぁ、いいけど。飲み終わった? そろそろ帰るか」
「え? あ、うん」

もう帰るのか。
結局、何だったの?
私が最後のイチゴカフェオレを飲み干していると、龍輝君がフッと笑った。

「付いてる」
「え?」

龍輝君の大きな手が私の頬っぺたを包み、口元をグイッと拭った。

「っ……!?」

な、何を!?
目の前の龍輝君はニッコリ微笑む。

「あれ? 顔真っ赤だけど?」
「な、何を言って……! ビックリしただけ」
「ふぅん? ときめいたのかと思った」

頬杖ついたまま色っぽく微笑まないでよ。
自分でも顔が赤いのはわかってる。
だって心臓がありえないくらいドキドキしていた。
あんなの、不意打ち。
誰でもドキドキしちゃうよ。

「フッ。惚れてもいいけど?」
「し、しません!」

驚いて声が高くなる。
そう簡単に惚れるわけないでしょう!?

「まぁ、早く終わるゲームもつまらないよな」

その低い呟きに、さっきとは違うドキッが起こった。
一瞬にして胸が冷たくなる。
そうだ。
何をドキドキしてるんだろう。
龍輝君にとってはただのゲームでしかないのに。
……バカみたい。

「……安心してよ。そんなに簡単な女じゃないから」

そうよ。そんな簡単な女じゃない。
だから惚れたりしない。
好きになんてならない。
龍輝君はただの幼なじみだもん。
傷のこととか、責任感じてとか色々あるけど、でも……。
私たちはそもそも、久々に再会したただの幼なじみという関係なんだから。

「あっそ」

そうつまらなそうに言って、龍輝君は伝票をつかんでレジへ向かった。

その後ろ姿に、チクンと胸が少し痛くなった。
でも、それもほんの少しだけだ。





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