~LOVE GAME~


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「アリスー! 紅茶、早くー」
「はぁい! ただいま!」

大きな声で返事をしながら、慌てて裏に回る
。調理チームに紅茶を受け取って、急いでお客さんのもとへ届けに行った。。

現在、交流祭の真っ只中。

カフェに見立てたクラス内は人でいっぱいだった。
私もアリス格好をしてスカートを翻しながら忙しく動き回る。
我がドリームカフェは有り難いことに大盛況だった。
貴島君がクッキーを作ったらしい、と口コミで広がり、ほとんどが噂を聞き付けてやってきた女の子だった。

「……疲れた」

裏に入ったちながため息をつく。
タキシードを来たちなは男装をしている。
贔屓目に見ても、とても格好良くて素敵だった。

「ちな、カッコイイからご指名来ちゃっているもんね」
「アリスも何気に人気だよ。春岡龍輝のアリスって」
「ええー! なにそれ」

また変な噂が流れてる!?
少しうんざりした気持ちだ。
ちなはニッコリと笑って、仕切りのカーテンの隙間からカフェを覗いてキョロキョロする。

「その彼は来ないの?」
「彼じゃないって!」

否定するがサラッと流された。

「はいはい。で、来るの来ないの?」
「知らな……「アリスー! 客ー」

答えようとすると、仕切りのカーテンがチラッと開いて、クラスの男子が顔を出した。

「はぁい」

ちなから逃げるようにホールに出るとそこには… …。

「どうして」

ため息混じりに呟くと相手は首を傾げた。

「来たら迷惑だった?」
「迷惑じゃないけどさぁ」

ニッコリと微笑んで目の前の相手である龍輝君は言った。
周りの目を気にして欲しいだけなんだよね。
龍輝君の姿に、確実にさっきよりもギャラリーが増えた気がする。

「アリス、可愛いね」

可愛いと言われてドキッとする。
顔が赤くなるが、接客中なので素っ気なくなってしまった。

「どうも……。ご注文は?」
「冷たいねぇ。じゃぁ、このクッキーセットで」
「少々お待ち下さい」

事務的に注文を取って、私は龍輝君から逃げるように裏へ戻った。

「はぁ……」

表の顔とはいえ、なんでああもアッサリと可愛いとか言えちゃうんだろう。
嫌な気持ちじゃなく、素直に嬉しいって思っている自分がいる。

「はっ。違う違う! そんなんじゃない!」

もう……。
気持ちを落ち着かせつつ、私はすぐに紅茶とクッキーを持って龍輝君のテーブルへ向かった。
龍輝君はクッキーを食べながら私を見上げた。

「俺これからなんだ。 出番」
「そう」

そういえば、お化け屋敷をすると言っていたっけ。

「来てくれる?」

その言い方が可愛らしくて思わず龍輝君を見つめる。

「何?」
「あ、いや……」
「じゃぁ、待ってるから」

紅茶を飲み干して立ち上がる。

「ありがとうございました……」

表の顔だとわかっていても、素直な態度の龍輝君に毎回戸惑ってしまう。

「あの龍……」
「松永さん」

龍輝君に話し掛けようとしたとき、後ろから声をかけられた。
振り返ると貴島君が立っていた。

「あ、貴島君」

貴島君は龍輝君にニッコリと微笑んだ。

「あれ?春岡。来てたんだ?」
「あぁ……」
「貴島君、どうかした?」
「そうそう、松永さん。調理室に一緒に来てくれないかな。クッキー、全部焼き終わったから、室内点検して鍵を閉めしたいんだ」
「あ、そか。委員長の仕事だったね。今行くね」



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