~LOVE GAME~
「ん……」
と、出てきたイチゴジュースを私の手に乗せた。
「ありがと……」
「貴島と付き合ってんの?」
「えっ」
突然のストレートな言葉に驚いて思わずジュースを床に落とす。
「あっ……」
「わかりやすいやつ」
龍輝君が低い声で苦笑する。
どうしよう……。
中庭の……、見られてたんだ。
悪いことをしているような気分になって、焦りが出てくる。
「あの、付き合ってるって言うか……あれは事情があって……」
なんて言ったらいいんだろう。
お試しで一週間付き合っているって素直に言う?
人と試しで付き合うような軽い奴って思われるかな。不誠実とか。
色んな考えが頭を過り、言葉が出てこない。
「あの……」
それでも何か言わなきゃ。
と、顔を上げた時。
「松永さん? どうしたの?」
声をかけられ振り返ると、貴島君がこちらに向かって歩いて来ていた。
私と龍輝君の姿を見て、一瞬動きが止まる。
「……春岡君か。松永さんに何か用?」
「いや? 別に偶然会っただけだよ」
龍輝君はニコッと微笑み返す。
そして落ちたイチゴジュースを拾い、ポンと私の手に乗せた。
「じゃぁ」
ポケットに手を入れ、その場を離れようとした龍輝君に貴島君は声をかけた。
「そうだ、春岡君。俺達、付き合うことになったんだ」
「き、貴島君っ……!」
「祝福してくれるよね?」
貴島君のセリフに龍輝君は振り返って、そして、ニッコリと微笑んだ。
「あぁ。おめでとう」
え……。
私は去っていく龍輝君を眺めながら言葉を失った。
祝福……するの?
「……ん。……さん。松永さん?」
貴島君に肩をポンッと叩かれ、ハッとする。
「あっ、えっ?」
「教室、帰ろう?」
ボーっとしていたようで、心配げに貴島君が微笑んで私を見ていた。
もう廊下に龍輝君の姿はなかった。
「あ、うん。戻ろうか」
私は手の上のイチゴジュースをソッと握りしめた。