~LOVE GAME~



昼休み。

「一緒にお昼食べようよ」

そう貴島君に誘われて、ふたりで中庭に出てお昼を食べることにした。
最近はほとんどが資料室だったから、外の空気を吸いながら食べるなんて何だか新鮮だ。
日差しがポカポカと気持ちがいい。
ベンチに座り、お弁当を広げる。

「あれ、貴島君もお弁当だ。お母さんの手作り?」
「あぁ、いや。俺、料理とか好きだから自分で作ってる。っつても、適当だけど」

と、恥ずかしそうに笑う。

「そんなことないよ。彩りも綺麗で美味しそう。上手なんだね」
「本当? 照れるな。ありがとう」

褒められて嬉しそうに笑う。
男の子でもこんなに上手に料理するんだなぁ。
龍輝君とは大違い。
龍輝君の親は仕事で忙しいらしいし、いつも購買で買っていて、料理はほとんどしないって言ってたもんね。

「でも楽しいな。松永さんとこうしてお昼過ごせるなんて。昼休みはいつもどこかに行っていたでしょう?」
「あ~、うん。ちょっとね……」

私は曖昧に頷きながらお弁当を食べた。
貴島君はそのことについてはそれ以上、突っ込んで聞いてくることはなかった。
それからは、嬉しそうに色々話をしてくれた。部活のこと、勉強の事、飼っている猫の話。
私も楽しく話に参加するけど、でもなんだろう……。
まだ二人きりで他愛ない話をしながら過ごすことに慣れていないからかな。
気持ちがソワソワして妙に落ち着かない。

「あ、ごめん! 俺ばっかり話しちゃってたね」

私の様子に気がついたのかハッとした貴島君がそう言った。
慌てて私は首を振る。

「ううん! いろんな話が聞けて楽しいよ。あの、私、飲み物買ってくるね!」
「うん。行ってらっしゃい」

私はお財布を手に、その場を離れた。
う~ん……、なんだろう。変に気を遣うというか、どうしたらいいか分からなくなるなぁ。
私は自販機の前で小さくため息をつく。
お金を入れて、ボタンを押そうとしたとき………。
後ろから手が出てきてピッと、押されてしまった。

「えっ」

驚いて振り返るとそこには……。

「龍輝君……」

すぐ後ろには無表情の龍輝君がいた。
龍輝君は出てきたジュースを黙って取り出す。



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