~LOVE GAME~




放課後。
久しぶりに一人で帰るし、帰り道にどこかへ寄って遊ぼうとちなを誘ったが、今日はピアノの日だからと断られてしまった。
ちなは子どもの頃からピアノを習っている。今日はレッスンの日だったか。
残念だけど仕方ないからひとりで帰ろうかな。
そう思いながらも、帰る前に気になることがあった。

……ここ数日、ずっと心に引っかかっていること。

私の足は、ゆっくりと資料室へ向かって歩いていた。
放課後の人気のない廊下を進み、奥ばった資料室の前まで来てしまった。
奥にあり、人目につきにくいから余計にそこだけぽっかりと別空間な気がする。
今の私には、扉を開ける勇気がないけれど……。

「何してんの?」

扉の前にたたずんでいると、後ろから声をかけられ、驚いて振り返るとそこには龍輝君いた。

「龍輝君……」

なんか、少し気まずい。

「貴島と一緒じゃないのか?」
「あ、うん。今日は違う……」
「ふぅん」

龍輝君は私の横をすり抜け、扉を開けた。

「入る?」
「あ、ううん……」

入ろうかとも思ったが、それは何だかいけない気がした。

「あの、龍輝君……」
「ん?」
「あの……」

何か言おうと思うのだけれど、言葉が見つからない。
そんな私を見兼ねてか、龍輝君は開けていた扉を閉め、私に向き合った。
そして一言呟いた。

「帰るなら送るよ」

――――

辺りはもう薄暗くなってきている。
ソッと隣の龍輝君を見上げるが、その表情はわかりにくい。
結局、送ってもらっているけど会話がない。そもそも何を言ったらいいんだろう。
貴島君とのこと、弁解するのも違う気がするし……。
考え込み、俯いていると龍輝君が口を開いた。

「ここ……、よく遊んだ公園だよな」
「あ……」

見るとそこは幼い頃一緒に遊んだ公園だった。
近所だけど、この道を通ることは少なくて最近は来ていなかった。
懐かしい。

「この木……、こんなに小さかったんだな」

龍輝君は道路脇に植わっている大きな木を指差した。
いまでも十分大きいが、子どもの頃はもっともっと大きい木のように感じていた。
あんなに大きく感じた木も、今ではこんなにも小さく感じる。
あれからどれだけ歳月がたったのか、自分達が成長したのかを思い知らされた。

「あの日……」
「え?」

龍輝君は木を見つめながら呟いた。

「最後に会ったあの日、本当はさよならを言いにきたんだ」
「えっ? さよならって……?」



< 53 / 84 >

この作品をシェア

pagetop