~LOVE GAME~
龍輝君が言うあの日とは、彼がこの木から落ちた日のことだろう。
苦く苦しい記憶が甦り、胸が痛む。
「両親が離婚することになって、母親に着いて行くから学校を転校することになった。だから、あの日がお前と会える最後の日だったんだ」
「そう……だったんだ」
離婚と転校……。
そんな事情があったなんて知らなかった。
「怪我して病院へ行ってすぐに町を離れたから、あれきりになっちゃったんだ」
幼い龍輝君は私を追いかけ、この木から落ちて怪我をした。
その傷はまだ腕に残っている。
たぶん、一生消えない傷だ。
「私、たっくんは死んじゃったかと思っていた」
「アハハ。再会したとき本当に驚いていたもんな」
「だって誰も何も教えてくれなかったんだよ。私自身、ショックで記憶も曖昧になってしまって……。ここでの出来事を思い出せなくなっていた」
時々、夢で見るくらいでしか覚えていなかった。
いつも、事故が起きる前に目が覚めていた。
でも、龍輝君と再会して全てを思い出した。
だから。
「生きてたって知って… …、会えて……凄く嬉しかったんだよ」
そう言った私を龍輝君はじっと見つめる。
真っすぐな瞳から一瞬目が離せなかった。
そんな風に見つめないで欲しい……。
非難するような目ではなく、どこか熱を帯びる様な目にドキドキしてくる。
戸惑っていると、龍輝君は静かに言った。
「……帰ろう」
スッと踵を反し、歩きだす。
ちょっと遅れて、黙って私も着いていった。