~LOVE GAME~


さっそくちなにも報告をすると、喜んでくれた。
そうして今まで通り、龍輝君とお昼を資料室の奥で過ごし変わらぬ日々に戻った。
そう、変わらぬ日々に……。
驚くほど、今までとなにも変わらないのだ。

「あの日の甘いキスは何だったの……」

学校から帰宅後、ベッドに横になりながら鳴らないスマホを見てため息をつく。
龍輝君と付き合うようになって一カ月。
季節は夏になっていた。

「暑いなぁ~」

七月ともなると、セミもうるさく鳴いて、外に出ると汗をかくようになっている。
夏休みまで、あと少しだ。

それなのに……。

私たちはあの日のまま、大きく進展もなく、それどころか恋人らしいことも特になかった。
連絡だってそんなに頻繁にない。
いや、連絡はしているか。ただ、私はこまめにメッセージを送るのに対して龍輝君の返事が短いのだ。
クラスも違うから授業中は会えないし、昼休みも一緒に居て楽しいけど、そんなに甘い雰囲気にはなかなかならない。
帰りは時々送ってくれるけど、最近は忙しいのか先に帰ってしまうことが多かった。

デートだって……していないよ。

なんだか少し寂しかった。
恋人になったばかりだから、もっとイチャイチャした甘い日々が待っていると思っていた。

「なんか欲求不満みたいで恥ずかしい……。でも、もっと一緒に居たいと思うのはぜいたくな悩みなのかな」

そんな自分の呟きが虚しかった。


――――

「どこかな……」

私は掲示板を覗き込んだ。
夏休み前の最後の期末テストの結果が張り出されたのだ。

「わぁ、予想通り凄いね」

掲示板の先を見て、感心の声が漏れる。
学年一位は春岡龍輝、二位は貴島聡とでていた。 

やっぱりふたりは凄いなぁ。

私はというと……。

「あった」

学年50位。150人くらいいるから中の上くらい。まずまずの成績だ。
さて、これが終わったから、あとは夏休みを待つだけ。
周囲にも開放感が漂っていた。

「楓ー、今日の帰りお茶していこうよ」
「うん、いいよ」

ちなに誘われたので、二つ返事でオーケーする。

「あ、でも彼に許可取るべき?」

ちながニヤニヤしながら聞いてくる。
それに曖昧に笑顔を返す。
許可するも何も、最近は一緒に帰っていないからな……。

「大丈夫だと思うけど……。一応、昼休みに言っておくね」

そうはいったものの、龍輝君は気にしないんだろうな。
昼休みにいつもの資料室でこの話をすると、やはり予想通りの答えだった。

「そう、いってらっしゃい」

だよね。そう言うと思った。
相手がちなだからって言うのもあるだろうけど、でもなんかもう少しあるんじゃないかなぁと思ってしまう。
いってらっしゃいと送り出されるということは、龍輝君とは今日も一緒に帰れないと言っているようなものだ。

「龍輝君……、最近忙しそうだよね」

ポツリと呟くと龍輝君が首をかしげた。

「あぁ~、まぁ……」
「その感じだと、夏休みもあまり会えないのかな?」

ここ数日思っていたこと。
龍輝君は最近とても忙しそうで、一緒に帰ることも少なくなっている。
このままだと、夏休みもほとんど会えないのではないだろうか。
それを口にしてみた。
チラッと龍輝君を窺うと、少し考えた様子を見せてから首を振られる。

「いや、夏休みは会えるよ」
「本当!?」
「あぁ。大丈夫」

やったぁ。
嬉しくなって顔がほころぶ。
それを見た龍輝君がフフッと笑った。

「楓はわかりやすいな」
「だって……」

寂しかった、というのはなんだか言いにくいけど、だからこそ凄く嬉しいんだもん。







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