~LOVE GAME~

ーー

「なにそれ、怪しい~」

ちなはケーキを突っつきながら、目を細めて顔を歪めた。
放課後、二人でカフェに入ってお茶をした。
その時に最近の龍輝君の様子を話したらこの反応だ。

「でも塾だって言っていたし……」
「あの春岡君が塾? 何のために? 高3ならまだわかるけどまだ高1だし……必要なくない?」
「目指す大学があるとか……」
「う~ん……」

ちなはどこか納得いかなそう。
まぁ正直、私もあの歯切れの悪い言い方には妙に引っ掛かりを覚えていた。

「付き合いだした頃はそこまででもなかったんだけど、ここ最近急に忙しくなったんだよね。それが塾だって言うならそうなんだろうけど……」
「ほら、楓だって納得していないじゃん」
「納得していないわけではないけど、なんというか……」

龍輝君に塾が必要だとは思えなかった。
いや、それも偏見かな? 龍輝君だって勉強に努力しているのかもしれないし……。
でも付き合いだして忙しくなったのには少し不満だった。
ちなはうーんと唸ったあと、あっと手をポンと叩いた。

「もしかして好きな人が手に入った途端、興味がなくなったとか?」
「えっ! どうしてそんな話になるのよ!」

私が青くなると、ちなは慌てて手を振って否定した。

「うそうそ! 冗談よ。春岡君に限ってそんなことはないから」
「う、うん」

冗談にしては心臓に悪い。

「春岡君が言う通り、最近塾に行き始めたんじゃないの?」
「やっぱり、そうなのかな」
「そうよ。学年1位をキープするのも大変でしょう? 貴島には勉強面でもライバル視されているようだし」

貴島君の名前がでて、苦笑いする。
貴島君とはあのあと少しだけ気まずい時もあったが、今では同じクラス委員として今まで通り自然に接することが出来ていた。

「塾、なんだもん。仕方ないね……」

ポツリと呟いた。
ほおっておかれている感じがして寂しいけれど、夏休みは遊べるって言っていたし……。
それを楽しみにしていよう。

「でもさ、楓とこんな話が出来る日が来るなんてね~」

ちなはフフフと嬉しそうに笑った。

「こんな話って?」
「恋バナに決まってるでしょう。今まで楓は恋愛より普通の平穏なのんびりした、お年寄りのような生活を好んでいたでしょう?」
「お年寄りって……」

ちなの言いぐさに吹き出して笑う。
でも間違いではないかも。

「なんだかんだ不満言いつつも、楓、幸せそう」
「そう?」
「うん」

ちながニッコリと微笑んだ。
それに釣られて私も頬が緩む。
確かにちなの言う通り、今凄く幸せだ。



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