~LOVE GAME~


「あ……えっと、春岡君?」

そこには春岡 龍輝が立っていた。
私と目が合うと、ニッコリと微笑んでゆっくりと近づいてくる。

「良かった、間に合って。これ、忘れ物」

その手には私のペンケースが握られていた。
どうやらさっきの集会室に置き忘れていたようだ。

「ありがとう」

わざわざ持ってきてくれたようで、慌ててお礼を言う。
探して持ってきてくれたのか、いい人だなと思った。

「どういたしまして」

と、春岡君は柔らかい笑顔を見せる。
おお、本当にイケメンだ。
間近で見た笑顔にドキドキしちゃう。
何だか変に照れるなぁ。
春岡君の笑顔に見とれると、春岡君はフッと笑顔を消して私をじっと見つめてきた。
えっと……???
さっきと同じ視線だ。

「あの、何か……?」

耐え切れず、控え目に聞いてみる。
何か付いているのだろうか。でもそうしたら、先に貴島君が教えてくれるだろうけども……。
そう思い、戸惑っていると春岡君は笑顔を作り、首を振った。

「あ、いや。何でもないよ。じゃぁ、また」
「あ、はい」

そのまま踵を返し、春岡君は帰っていく。
その後姿に首をひねった。
何だったんだろう。あそこまでまじまじと見られると、ちょっと不躾ではないかと感じてしまう。
しかし、そこまで嫌な気分ではなかったのは相手がイケメンだからだろうか。

「最後まで俺は無視だったなぁ」

ちょっと面白くなさそうに隣で貴島君が呟いた。
貴島君は私を振り返り、首をかしげた。

「松永さん、春岡の知り合いだった?」
「えっ、ううん。違う……と思う」

知り合い?
いや~、あんなイケメン見たことない。
会ったことあったら忘れないだろう。
私は頭の中で、必死に過去の記憶をさかのぼるが、やはりあんなイケメンは出会った覚えがない。
ということは、初めましてだと思うんだけれど……。

……どこかで会ってた?
春岡 龍輝ーー……………












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