~LOVE GAME~


「松永さん? 松永さんの番だよ?」

貴島君がこちらを覗き込む。
ハッとすると、いつの間にか自己紹介の順番が回って来ていた。
慌てて立ち上がり、挨拶をする。

「あっ、はい! えっと1-Gの松永楓です。よ、よろしく……です……」

緊張で少し声が上ずってしまい、挨気まずくなりながらおずおずと席に着く。最後の方は声が小さくなってしまった。
それには理由がある。
だって!
だって、変わらずジッと春岡君に見られているんだもの。
春岡君は私の自己紹介中も、変わらずじっと見てきた。
気のせいなんかではなく、自意識過剰なんかでもなく、彼はじっと射抜くように私を見ていたのである。
あそこまで見られるとドキドキなんてしない。
なんか逆に逃げ出したくなる気分だ。
なんであんなに見てくるのだろう。
何か悪いことでもした?  
でも初対面のはず……。
あ、もしかして顔になにか付いてるとか!?
そうだったらめちゃくちゃ恥ずかしい!
慌てて顔に手を当てた。
きっとそうだ。顔に何かついていたら、そりゃぁじっと見てしまうよね。
自問自答をし、納得する。
そして、そっと顔を上げると春岡君は黒板に目を移し、もうこっちを見てはいなかった。

第一回目の委員会は無事に終わり、私は貰った年間予定資料をペラペラとめくる。
はぁ~、なんだか変に疲れた……。
委員長ってのも大変だなぁ……。
これから行事を仕切っていかなくてはいけない立場にあるなんて、私の描いたまったりゆったり高校生活とはかけ離れていくようで、うんざりとしたため息が出る。

「松永さん、会議終わったし、帰ろう?」
「あ、うん。今行く」

私は貴島君に続いて集会室を出た。
廊下の窓から外を見ると、もう少しで日が落ちそうだった。
今日は初回ということもあって、自己紹介が主だったが、なんだかんだで時間がかかったようだ。
すると、隣を歩く貴島君が口を開いた。

「ねぇ、自己紹介の時に春岡さ、松永さんのこと見てたよね?」
「へ!?」

ドキッとする。
やはり隣にいただけあって、貴島君も春岡君の視線に気が付いたようだった。

「あ、えっと……そうかなぁ~?」

しかし、私はなんとも曖昧な返事をしてしまった。
だって、そう感じただけで実は違ったかもしれないし。
あんなイケメンが私を見ているはずもないし。
何かついていただけかもしれない。
変に肯定して自惚れるのも恥ずかしい。
あんなイケメンに見つめられた、だなんて自意識過剰も甚だしいよね。

「ん~、気のせいだよ。あ、それか私の顔に何かついていたとか」
「そう?」

うんうんと頷く。
そうだ、気のせい、気のせい。
そう思おう。ひとりで何度もうんうんと頷いていると、隣の貴島君がホッとしたように苦笑した。

「そっか。変に気にし過ぎちゃった」
「え?」

何を? と聞き返そうとした時、廊下の後ろから呼び止められた。

「松永さん」

突然呼び止められ、驚いて振り返る。
そこには思いがけない人がそこに立っており、驚いてしまった。

「え? あ……」

声の方を見ると、そこには噂の彼がいたのだ。






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