また、明日~天使の翼を持つキミへ~
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「えー、俺、指揮者より歌う側の方がいいんだけど」
高校2年の4月。
新学年最初の学校行事は、合唱コンクールだった。
指揮者に一番ふさわしいのはリズム感のある親太郎だと、クラスみんなの意見が一致した。
けれど、当の本人は、あまり乗り気ではないようだ。
「いいじゃん、親太郎。他は何もできない親太郎の唯一の才能じゃん。ここで発揮しなきゃどこで発揮するのよ」
窓際の一番後ろに座っている親太郎。
黒板の真ん前に座っていたあたしは、クルリと振り返り言った。
「それって、褒めてんの? それともけなしてるの?」
頬杖をつく親太郎の眉間に、グっとしわが寄った。
ドッと笑い声が上がる教室。
新学年の、新しい空気。
みんなのテンションは高かった。
1年の時と校舎が変わっただけで心もガラリと変わり、またひとつ、大人になったような、何だか不思議な感覚になった。