one's first love
『あーもぅ…やだ……あたし泣いてばっか…』
あたしは裕くんに背を向けて、鼻水を啜りながら涙を拭う。

「……あのさぁ…」

『んー?』
あたしは背を向けたまま返事をする。

「…ぎゅって…してもいい…?」

『へっ…?!だっダメ!!』

「…ごめん、そぉ言われると、余計にしたくなる」
裕くんはぎゅっと強く、だけどどこか優しく、
あたしを後ろから抱きしめる。

あたしは顔に一気に血が集まる。


「だっ…だめだってば!!」
あたしは離れようとするけど、裕くんはそれを許してくれない。


……そんな事されたら好きになっちゃうぢゃん!!


「……大丈夫だよ。なちは…夏はちゃんと女の子だよ?俺はわかってるから…だから…だからもぅ泣くなよ…」
泣きそうな声で、あたしを慰めるように強く抱きしめられる。

あたしの体の血の巡りがよくなって、体が熱い。
顔からは火が出そう…。



あたしの胸は高鳴る。

『あっ…あのっ…』

「…え?」

『あ、あたし…帰る!!ありがとね!!』
あたしは急いで身支度をする。

「あっ…ごめっオレっ…」

『だ、大丈夫だからっ』
ありがと。
あたしは逃げるように裕くんの家を出る。

裕くんの家を出ても、
あたしの心臓はうるさい。

『……鳴りやんでよ……』
心臓を押さえながら、
あたしは家に向かう。

帰り道、あたしは裕くんの事で頭がいっぱいになっていた。


……抱きしめられるのって、落ち着くんだな……


あたしはその日、
なかなか眠りにつけなくて、
胸がキューって締め付けられて、息苦しくて、

ただただ、
今日起こったことを、
頭の中でぐるぐる考えていた。



あたしね、裕くんがしてくれた事、
全部嬉しかったよ。

いって欲しいこと、
して欲しいことを
わかってくれてたから。

あたしはきっと、
誰かに、

「大丈夫」って、
「泣いてもいいよ」って、
言って欲しかったんだね。

優しく抱きしめて欲しかったんだね。


裕くん。
ありがとう。

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