恋は翼に乗って~アロハ・ハネムーン~



「はい、私どもは新潟県の燕市というところで洋食器の小さな工場を営んでおりました。一時は好景気で、家内には世界一周旅行に連れて行ってやるなどと大口を叩いたこともありましたが、近年の円高でとうと工場は閉鎖。
息子夫婦はアパート経営を始めるためさっさと建物を潰してしまったのです。
でもこれも時代の流れで仕方ないことです。ハワイ旅行ももはや夢かと思いました。
しかし、甥の結婚式のため十数年ぶりに上京してきて、このままではハワイどころか妻を国内旅行さえも連れて行けんようになると思ったら、急にさみしくなりまして・・・。
家内も私もパスポートだけは5年毎にきちんと取得していたのです。一度もスタンプが押されたことはありませんが・・・。
甥が式の後でまっすぐ、ヨーロッパに新婚旅行に出かけていったのを見たら、よし、今日この足で申し込もうと思いまして」




公作は、酒のせいで饒舌になっていたのか、一気に話すとふーっとため息を漏らした。

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