1985年、僕は総理と呼ばれていた。
大学生活も終わりの頃に、雄二は絵里と知り合った。その頃には絵里はこのような容姿ではなかったのだが、ことあるごとに昔の話を聞かされ、写真も見せられていたので、この写真を見ても、特別に驚いたりはせず、金髪にしていたこともあったのかと思う程度だった。
「被写体はどうでもいいのよ。これよこれ」
絵里は照れくさそうに言いながら、写真の右下に並ぶ数字を指差した。
写真の撮影年月日を表している数字だった。
「おっ!誕生日じゃない」
絵里は、そうなのと言いながら、1985年よ、25年前よと興奮気味に言った。
「17歳か」
雄二は写真を見つめて言った。
「17歳だねぇ」
絵里がキッチンで煙草の煙を吐き出しながら呟く。
「俺も17歳だったんだなぁ。このころは、勉強机にしか向かっていなかったよ。あとは、ゼミか」
雄二は鼻の脇を人差し指で掻きながら絵里を見た。
「雄ちゃんはそういうときにたくさん勉強していたから今があるんじゃないの。私なんか追っかけばかりで勉強なんかしてなかったもん」
絵里は煙草を吸い終え、雄二の前に来た。