1985年、僕は総理と呼ばれていた。
 
 新宿中央公園を後にした雄二は、フラフラと自分の死に場所を探していた。


 手には公園内で話かけてきた男から貰ったカップ酒を持っていた。


 死を決意した雄二は、所持しているものを全て処分した。男から、はさみとライターと鈍器を借りて、紙幣や硬貨、カード類などを燃やしたりバラバラに切った。斜め掛けの鞄の中のものも同様に。


 それらの行為は、道具を貸してくれた男に怪しまれないように、公園の草陰ですばやく行った。


 そして、最後は携帯電話を粉々に破壊し、バラバラに捨てた。雄二は背中にびっしょりと汗をかいていた。


 斜め掛けの鞄と、鞄の中に入れっぱなしだった、飲み会の場で山口から貰った沖縄土産は処分に困った。鞄は革製ということもあり、また土産はそれなりの重量のあるものだったからだ。


 結局、その2点は、道具を貸してくれた男にあげた。この時代にあってもおかしくはないだろうと思ったからだ。その礼として、男は雄二にカップ酒をよこしたのだ。


 雄二はそれを受け取ると、足早に公園を出た。


 歩きながら、自分の身なりを再度確認した。来ている服や身につけている下着や履いてる靴などは、無メーカーの安いものだから問題ないだろう。


 「これなら、俺の死体があがっても、身元はわからないはずだ」


 雄二は確実に死への階段を昇っていた。


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